時代を視る
2023年10月ニュースレター 時代を視る NO354
2023年10月10日
一般財団法人WIN WIN 代表 赤松良子
おー、オクトーバー、10月か。
読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋、人恋しい秋、芸術の秋・・・。いくらでも出てきそう。そして、それを歌ったうたも数多い。春のものとどちらが多いかしら。数だけなら、春かもしれないが、質となると秋が上ではないか? 秋の歌の方がしみじみと味わい深いものが多いからであろう。私は秋という季節が好きである。でも私の母は秋が大嫌いだったように記憶していて、それは、母がとても淋しい幼時を過ごしたから、らしい。
母の生家が、士族の誇りだけは高いが貧しく、子沢山の例にもれず、もらい手があると、さっさとくれてやったのだという。もらわれていった家に馴染めず、逃げて帰ってくると、まあ仕方がないと、とがめもしない母親だったらしい。そしてまた、もらい手が来ると「はい、どうぞ」となった。この話、母が私の同情を得るため、何度も聞かせ、私は自分はそんなことなく、ちゃんと母のそばで育てられていることを嬉しく思うようになっていた。
秋になったからといっても、大阪は木々の葉が散るでなし、夏よりもずっと過ごしやすい季節なのだった。大阪の夏ときたら、32~33℃、ぐらいだろう、暑いことは暑いが、それより湿度が高いので、ひどかった。瀬戸内海の宵の風がパタリと止んだ頃合いの、むし暑さときたら、今思い出してもひどいものだった。それに引き換え、秋は。というわけで、親に可愛がられ、ぬくぬく育った私にとって、秋は遠足やら運動会やら、楽しいことが多いのだから・・・。「日本の秋よ、ああ、ホガーラ!」という歌まであるではないか。
それと違って、ヨーロッパ。10月後半はもう寒い風が吹き出すのではないか。シベリアからビューッと。ウクライナはどうかしら・・・。ロシアからみれば温暖な土地なのかも知れないが、家を追われた人達は、とりわけ小さな子ども達は・・・。
世界には貧しい国はいっぱいある。ミルクやパンを与えられず、飢えに泣く子どもは多く居る。私が働いているユニセフは、貧しい国の子ども達に必要なものを届けるのを仕事としている。ただでさえ、モノやカネを集めるのに苦労なのに、とんでもないことをしてくれる。明治生まれではないから、日露戦争までは遡れないが、「非道」という言葉を使いたくなる出来事である。
折角、「食欲の秋」なのに、おいしい物を食べるのが申し訳なく思えるような出来事ではないか・・・。
「美しい日本の秋」から始めたのに、また、暗い話題になってしまった。そういう世界なのか、今は。ヤレヤレ!