時代を視る

2015年3月 ニュースレター 時代を視る Vol.180

2015年3月10日

WIN WIN代表 赤松良子

選択制夫婦別姓問題が、最高裁大法廷で審理されることになった。この問題が夫婦間でのみならず、広く国民の間で議論されるようになって何年になるだろう?

民法第四編 親族と第五編 相続とは、太平洋戦争後の民主化の中で戦前のものとは全く姿を変えて制定された。それは昭和22年の施行の民主主義憲法の下で、男女平等=夫婦平等の理念に反することがないように公的審議会はもとより、多くの国民の意見を聞いて作られたと私も記憶している(その時17歳だったから参政権はまだ無かったが・・)。

その新民法第四編 第二章婚姻 第二節婚姻の効力のはじめ 第七五〇条「夫婦の氏」に「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い夫または妻の氏を称する」と規定されている。この条文は、明治民法と比べ、一見、夫婦を平等においているように見える。(旧法では「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」だから、どちらの氏を称するのか、話し合う必要もない。)だが、ここでは夫婦が同一氏を称することのみ認め、別姓を名乗ることは認めていない。そこでどうなるかといえば、殆どの結婚において、夫の姓を称すると決め、妻は改姓することになる。私達が日常目にする知人からの結婚通知を思えば一目瞭然、新夫の氏名の横に新婦の名が書かれ( )の中に旧姓○○と書かれている。それで満足ならば結構だが、改姓することに不便があったり、喜ばしくなかったりすることもまれではない。女性が親の扶養家族から直ちに夫の扶養家族になる場合は、結婚で姓が変わっても、あまり痛ようは感じないかもしれない。学校時代の友人に新しい姓で名乗られても分からないので困るぐらいのものか。しかし、女性が自立して職業をもちあるいはパスポートを持ち、自分の氏名が大きな意味を持つ生活になれば、それが変わるのはとても不便なことである。

事実婚というものがある。これなら、同一の姓を名乗ることは要求されない。簡単でいいから、フランスはじめ諸外国ではそれは広く存在している。大部分がそれだという国さえあるようだ。だが、日本はそうではなく、結婚というのは式を挙げ、役所に届出することと深く結びついている。事実婚では相続権も相互扶助義務もないから、安心できないという心裡が強く働くのだろうか。

とに角法律婚をする、しかし姓は変えたくないというケースは女性が社会進出する度合いに比例して増加することは否定できない。とすると、現民法の規定は、一見男女平等に見えて、実は女性に多く被害を与えている規定なのではないか。形式的に平等、事実上は差別という典型的なものであろう。

選択制別姓というのは、文字通り、すべての夫婦に別姓をというのではなく、別姓にしたい場合にできるという制度である。子の姓をどうするかという問題は出産の時に父母のどちらかを選べるようにし、兄弟姉妹が姓が異なることを不思議がらないようにすればよいではないのか。社会は変わる、家族の姓への考え方もフレクシブルであるのがよいではないだろうか。