時代を視る

2017年5月 ニュースレター 時代を視る Vol.206

2017年5月21日

WIN WIN代表 赤松良子

春、4月。花の都で桜見物をし、平和な国である事を喜んでいたら、7日一転、中東シリアでミサイルが発射された。トランプ大統領が「化学兵器使用」を理由にアサド政権に対し突如武力行使をしたのである。直前にロシアに対しては通告したというが、国連安保理の合意は勿論なく、国際法違反なのではないかと疑われる行為である。これに対する各国の対応はまちまちだが、多くに共通しているのはアサド政権への批判までで、アメリカの武力行使については、「支持」「適切」「反発」と分 かれている。こういう動向を検討したのか、どうか、日本は早々と、トランプ全面支持を打ち出した。

思い出すのは2003年のイラク戦争である。米国が国連を無視したまま、イラクが「大量破壊兵器」を所持しているという理由で、イラクを武力攻撃した時、小泉内閣が他国に先がけて、これを支持したのだった。当時、小泉首相とブッシュ大統領とは、ハネムーンと冷やかされるほど緊密な関係だったように記憶している。一方、イラクのフセイン大統領は独裁者だとか傲慢だとか云われて不評判であったから、アメリカのイラク攻撃が、証拠も不十分だったのにまかり通ったのだった。そして後に実情調査が明らかにしたところでは、イラクに「大量破壊兵器」は存在していなかったのである。それを知った時、私達は唖然としたのだが時すでに、フセインは失脚し、世界情勢は変わっていて、アメリカの武力攻撃への批判はウヤムヤになってしまったのではなかったか?どこの国でも政権が不評、あるいは支持が低迷すると、外国との関係に目をそらせる事によって人気浮上をはかるという手段がとられることがある。極端な例は戦争を起こして、国民の関心を戦勝への一点に集中させるのである。20世紀はじめの日本は、その典型であった。自分の国に非があるのではと云うだけで、非国民呼ばわりをされたことを、私の世代の人間なら憶えている。トランプ政権が発足半年もたたずに行き詰まり、政権浮上の途を探すのに やっきになっていることは誰の目にも明らかであった。そんな時、シリアの アサド政権が化学兵器を使用して、罪のない子供や市民を殺しているというニュースが流れた。それが事実なら、人権問題として、これをやめさせる方途を講じるべきは当然であろう。しかし、事実かどうかの証拠を見つけるイトマもあらばこそ、ドカーンとミサイルを撃ち込むとは、  良識のある人間なら??? と首をかしげるに違いない。 と思いきや、わが国の政府は・・・・である。また、イラクの時のように、そんな 事実は無かったのに、一方的に攻撃したということがわかったら、どうすれば よいのか。アメリカは大切な同盟国である。だからといって、そのリーダーが不評から逃れるために武力行使をするのにお先棒を担ぐのまでは御免こうむりたいものではないだろうか。