
時代を視る
2025年8月ニュースレター 時代を視る
2025年8月15日
一般財団法人WIN WIN 代表 山口 積惠
7月30日のロシア・カムチャッカ半島付近を震源とする巨大地震では、約1500キロ離れている日本の太平洋沿岸部に津波が押し寄せました。気象庁によれば日本各地に押し寄せた今回の津波は、「さまざまな場所に、長く、繰り返し」やってくるのが特徴だと言い、この揺れを感じないほど遠く離れた場所にまで到達する津波は「遠地津波」というそうです。大きな揺れを感じなかった地域がほとんどだったものの、3.11を経験している日本では、同日に津波警報と津波注意報を発し、約200万人を対象に避難指示が出されました。交通網の乱れが生じ、そこに猛暑が加わり、困難な状況になられた人々もいたのではないでしょうか。改めて南海トラフ地震への警戒も意識していきたいものです。
7月20日投開票となった第27回参院選の議席(全125議席)が確定しました。ご存知の通り、与党である自民・公明の両党は参院全体の過半数を維持できる50議席を確保できず(47議席だった)、衆院に続き参院も少数与党となりました。野党では議席増には至らなかった政党がある一方で、国民民主党や参政党が議席数を大幅に伸ばし、政党の多極化が浮き彫りになりました。続投を表明している石破首相ですが(8月9日)、私たちは党内での「石破おろし」にばかり目を向けるのではなく、裏金議員の責任をうやむやにしている党が今後どのように対応していくか注視したいと思うのです。
今回の参院選で女性当選者は42名。前回2022年の35名を上回り、過去最多となりました。また、女性立候補者では、前回の181名に次ぐ152名で、候補者全体に占める割合は29.1%という結果でした。WINWINが今回推薦した女性候補者は3名で、残念ながらその数は少なく、亡くなられた赤松良子さんに胸を張って報告できる数字ではありません。この事実を踏まえ、超党派での支援を継続してきたWINWINの活動をさらに広げていく必要があると痛感しています。
さて、総務省によれば今回の参院選では投票率が58.51%になり、前回よりも6.46ポイント上がったといいます。特に10代の投票率が大幅に上昇したといいます。近年、SNSなどの利用を活発に行う若い世代は、短い動画などを駆使してアピールする候補者に、既存の政党にはない魅力を感じたのかもしれません。ただ、ある政党の女性候補者が演説で、「核武装が最も安上がりで、最も安全を強化する策のひとつ」と発言していたのは、戦争被爆国の国民の一人として到底容認できるものではありませんでした。
報道によればこの発言に対して、もともと保守系だった大西一史・熊本市長がX(ツイッター)で毅然と反論していて、共感しました。この女性候補者は当選し、国会議員となりました。政治家の「ことば」が持つ重みをもう一度考えてほしいと思うのです。また、同じ政党が独自の憲法案で教育勅語の尊重を掲げていることに対して、阿部俊子文部科学相は記者会見で「憲法や教育基本法に反する形で教育勅語を用いることは許されない」と述べたのは当然だとも言えます。この政党は海外でも注目されており、「日本の右傾化」と指摘するメディアも多数あり、私たちは冷静にこの政党の動向を見ていかねばならないと思いました。
WINWINの創設者であり、男女雇用機会均等法の成立に尽力された故赤松良子さんの人生・活動・業績を紹介する「赤松良子展」が、国立女性教育会館(ヌエック・埼玉県嵐山町)の女性アーカイブセンター展示室で開催されています(9月23日まで)。WINWINでは6月末に山口代表と理事数名で現地を訪れました。展示は赤松さんゆかりの品々、新聞や雑誌の記事、写真、文部大臣任命書などがあり、写真は旭日大綬章綬章の正装姿、ヒラリー・クリントン氏と写ったもの、労働省婦人少年局長として予算委員会で答弁に立つ赤松さんの写真など貴重なものばかりでした。
案内をしてくれた情報課専門職員の森未知さんは「男女雇用均等法から40年。展示を通じて赤松さんの歩みを多くの方に知って頂き、歴史から学んでいただけたらと願っています」と語ってくれました。尚、展示されていたパネルなどは、地方自治団体の女性関係機関、生涯学習機関、大学・企業を対象に貸し出しも行われています(詳細はヌエックのHPで)。是非活用していただけたらと思います。
(理事・甘利てる代)