時代を視る

2025年10月ニュースレター 時代を視る

2025年10月15日

一般財団法人WIN WIN 代表 山口 積惠

10月4日、自民党総裁選の開票が行われ、高市早苗氏が自民党初の女性総裁に決まりました。総裁選には高市早苗氏、小泉進次郎氏、林芳正氏、小林鷹之氏、茂木敏充氏が立候補しており、一回目の投票結果では高市氏が必要な過半数の得票に達しなかったため、決選投票となりました。決選投票は高市氏と小泉氏で争われ、結党以来初となる女性総裁に決まった瞬間を中継などで観た人は多かったと思います。高市氏は昨年の総裁選でも決選投票に残っていたことや、当選10期という安定感があり、党内では順当だと判断されたようです。首相指名選挙は、15日の臨時国会で実施されるということですが、高市新総裁が石破首相の後任の新首相に選出される見通しです。初の女性首相誕生は、日本の憲政史に新たな1ページを開いたことは確かです。一方で新総裁となった高市氏は記者会見で憲法改正にも言及しており、また新聞などでも氏が外国人への規制強化に意欲を示していることを指摘し、中道路線を掲げた石破政権よりも右派色が強くなることを懸念する記事もあり、私たちも関心を持っていきたいです。ところで、今回の総裁選では前回と違い、「選択的夫婦別姓」の議論がトーンダウンしました。5人の候補者が揃った共同記者会見でも5氏ともに慎重な回答でした。高市氏はかねてから旧姓の通称使用の拡大で課題解決できるといっており、あるいは制度導入にはさらに時間を有するかと思われます。この事態を、制度化に向けて活動してきた亡き赤松良子さんがみたら、どのように思われるか・・・などと考えます。

 

第十一期赤松政経塾がスタートし、9月20日、都内の国際文化会館で開催され、2002年に大阪府知事となった太田房江さん(前自民党参議院議員)を第一講義の講師に迎えました(第2講義の詳細は下記に)。太田房江さんは今年7月に2期務めた参議院議員の職を辞していて、「だから今日は本音で話ができます」と気さくな人柄を感じさせるスタートでした。太田さんとWINWINの関係は深く、2002年に大阪府知事選に立候補した際には推薦し、当選して初の女性知事となった際には「直接赤松さんから花束をいただきました」と太田さん。講義は「一部オフレコね」と冗談まじりに言いつつも、選挙分析などでは党を越えての冷静な意見が続き、度量の広さを示しました。2025年7月の参議院選挙における会派別女性比率(候補者及び当選者)の数値を詳らかにして、太田さんはズバリこう言ったのです。「確かにこの選挙を通じて女性議員比率は33.1%になっています。ですが、表をよく見てください。比率を上げたのは自民党ではありません。野党の力です。野党各党が増やした結果です」と言って、自民党以外の各党における女性候補者数と当選者数のデーターを示しました。太田さんの舌鋒鋭い論評の裏側には自民党の奮起(女性議員を増やす視点)を願う気持ちがあったと思うのは考えすぎでしょうか。その後も、自身のこれまでの選挙戦を通じて実感した、女性政治家における壁などについて本音で話してくれました。(理事・甘利てる代)

 

第二講義は田原敦子さんでした。田原さんはテレビ朝日の「徹子の部屋」プロデューサーであり、黒柳徹子さんと世界の紛争地の難民キャンプを取材した時の体験をリアルにお話を頂きました。布の重なりと思っていたら死体の山だったり、スパイと誤解されて牢獄に入れられたり、地雷をいつ踏むかもわからないのでその対応について語っていただいたり、日本では考えられない危険を乗り越えた話に、皮膚感覚でいかに平和が大切であるかを実感させて頂きました。TV局プロデューサーの仕事の傍ら双子男児のワーキングマザーとして、NPO保育園の設立に関わり、副理事長としての活動も続けてこられたこと等、働く女性の多面的な活動をしっかりこなしてこられ、人柄の温かさと共に、芯の強い人格の魅力がしっかり伝わってくるお話でした。またTVの番組作りの背景には、視聴率とスポンサー獲得というビジネス上のニーズ・背景があり、各局のワイドショーなどでは視聴者を増やすため、政治的偏りを少なくした番組創りになってきていることなどを話して頂きました。この日の2つの講義は、この場にいなければ決して聞くことができない内容だった! と塾生たちの感動・感嘆の声を多く聞くことができました。(理事・渡邉嘉子)