
時代を視る
2025年6月ニュースレター 時代を視る
2025年6月15日
一般財団法人WIN WIN 代表 山口 積惠
6月に入りました。今年の梅雨はどうなることでしょうか。気が揉めます。気が揉めることは他にも・・・。先月号でアメリカのトランプ大統領がハーバード大学に対して補助金凍結の大統領令を発令したことなどについて書きました。こうしたトランプ氏の圧政はさらに加速し、状況が悪化しています。留学生をめぐり、新規受け入れ停止や在校生に転校を迫る方針まで出しました。この方針に対しては連邦地裁が当面の差し止めを命じているのですが、こうした矢継ぎ早に打ち出される方針に、留学生をはじめ留学を予定している学生は不安定な立場に立たされています。学生ビザ申請者向けの面接も一時停止するというのですから、もはや正論が通じません。
5月22日(木)に参議院議員会館101会議室で開催された、「クオータ制を推進する会(Qの会)」主催の院内集会の報告です。今年は、故赤松良子さんが法律制定に尽力された「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)の施行から7周年です。そこで、この6年間の成果を振り返り、同時に来たる参議院選挙や東京都議選に対して、各政党がそれぞれどのように女性候補者擁立に取り組んでいるかを詳らかにし、クオータ制実現のために何ができるかを議論しました。院内集会のタイトルは、「議席の半分に女性を!選挙は近い!がんばれ政党!進もう女性たち!!203050までは残り5年」です。参加者は81名で、賛同・パートナー団体は66団体でした。
集会は超党派議連事務局長の櫻井周衆議院議員の解説や長野智子氏・酒井なつみ衆議院議員・櫻井綾乃氏による鼎談とともに、集会の目玉ともいえる各政党に「6つのQ&A」形式で本音を聞くコーナーが設けられました。参加した議員は、紙智子氏(日本共産党)、円より子氏(国民民主党)、高木かおり氏(日本維新の会)、岡本あき子氏(立憲民主党)、くしぶち万理氏(れいわ新選組)、福島みずほ氏(社民党)でしたが、各政党とも女性議員比率が上昇していることを明らかにしました。また、直近に迫った参議院選挙における女性候補者の比率についても、まずは「50%をめざす」とし、党内努力に務めていることを説明。「政党クオータ制の実現は?」の質問に対しては「パリテをめざす」「女性議員の数値を明確にすることは必要」「党則でクオータ制導入を入れている」「政策に入れておりパリテに取り組む」といった回答がありました。プログラムの最後には、賛同団体・若手アクティビストからのアピールが行なわれ(WINWINもアピールしました)、政党に①女性議員比率を半数まで増やす努力を行うこと②女性候補者比率を50%以上にすることなどを呼びかける宣言文を読み上げました。
盛りだくさんになりましたが、もう一つ。4月の赤松政経塾における吉田晴美さん(衆議院議員)の「SNSと選挙」の講演報告です。吉田さんはインターネット広告市場が急速に拡大しているグラフを示し「インターネット広告費は、2021年にはマスコミ4媒体(新聞、テレビ、雑誌、ラジオ)の広告費を上回りました」と言い、「10代、20代のネット利用率は他世代と比較しても高い」と話します。若い世代にとってはユーチューブ、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSを使うことは何の抵抗もなく、「バズる」ことは好ましいと考えられています。一方で再生回数が多ければお金に結びつくので、次第に過激な内容になっていく傾向があることも否定できないと言います。ただ、お金を得ようとして選挙活動にSNSを使うのは「違う」と吉田さんはきっぱり。しかしながら、効果的に議員活動などのことを受け手に届けることは必要だと言い、自身は、現在は地域を限定して半径2キロメートル以内で出せるユーチューブ広告を出していると話しました。また、インスタグラムも使っていて、政治的な主張を投稿する一方で、政治からちょっと離れた話題を紹介した動画なども織り交ぜているようです。「そこで注意しているのは、長い動画は避け、1分以内におさめています。こうするとユーチューブにも入っていくので、何回か見てもらえば受け手のアルゴリズムを作り出せます」。
こうして硬軟織り交ぜながら、政治に関心を持ってもらい、政治離れを防ぎたいというのです。そして何よりも吉田さんがSNSに注目するのは「若い世代に投票に行ってほしい。投票率をあげるには 今後はSNSでの発信が重要になってくると思う」と、今後の展開を見据えています。
今年5月に施行された、改正公職選挙法では、選挙ポスターに品位を求める規定が設けられましたが、SNSについては付則の検討項目として記載されるにとどまりました。SNSが選挙結果を左右するまでに至っている現在、フェイクニュースや誤情報などへの対策が急がれます。
(理事・甘利てる代)