赤松政経塾

第十期3月赤松政経塾

2025年3月24日

第十期赤松政経塾

3月15日(土)午後6時より国際文化会館ハイブリットで開催

参加者は25名

第一講義 「戦後日本の原点に立ち返り、人道外交を」

講師 阿部 知子 さん 衆議院議員

 

 

 

 

「時代を視る」から抜粋

阿部さんは冒頭、クウェートの通信事業所が製作した動画の上映を行いました。動画は、主人公の少年がもう歳を重ねることのない子どもたちとともに、ニューヨークの安保理に行って無差別攻撃の悲惨さを訴えるというものです。歳を重ねることのない子どもたちこそ、ガザでイスラエルの攻撃によって死んだ子どもたちです。子どもたちは言います。「僕らに爆弾の嵐が降り注いでいます。僕らは死んでしまったけれど、この命と引き換えにいつかは幸せになる。そしていつか戻るんだ」と。動画は国際社会への静かで強烈な抗議でした。2024年2月に、阿部さんを事務局長とした、ガザの即時停戦の実現を求めて超党派人間の安全保障外交の推進を考える議員有志の勉強会が発足しました。発起人代表は、首相に就任する前の石破茂氏で、8回ほどの勉強会を重ね、同年5月に超党派の「人道外交議員連盟」(議連・会長は武見敬三参議院議員)を設立しました。小児科の医師でもある阿部さんは、ガザの死者の7割が女性と子どもだと説明し「イスラエルの攻撃は子どもと女性を狙っている。子どもを殺す戦争はあってはならない」ときっぱり。議連では、「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA・ウンルワ又はアンルワ)の関係者を招いての講演なども実施していて、パレスチナ難民に対し教育及び福祉などの支援を継続的に行っていくべきだとして、2025年2月には、人道支援の更なる強化を外務省に要請したと言います。要請ではメディカル・エバキュエーション(医療避難)の実施やガザで生活・教育などの支援に欠かせない役割りを担うUNRWAへの支援継続などを訴えています。阿部さんは「人道外交こそ世界の溝を埋めるものです。どのようにガザの子どもたちを守るのかが問われています」と語ってくれました。

 

第二講義 「格差社会のゆくえ、しあわせに衰退する日本」

講師 山田 昌弘さん  中央大学文学部教授

 

 

「時代を視る」から抜粋

山田さんは、今や日常的に使われている「パラサイトシングル」「格差社会」「婚活」などの名づけ親としても知られています。講演では多くのデーターをもとに、平成・令和の両時代の分析を通じて、どのような局面で格差が生じてきたかなどを詳しく説明してくれました。「推し活と言うことばがあり、近年は選挙も推し活化しており、好きかどうかが唯一の基準になっています。自分が好きになった候補者が票を集めれば自分の感覚が肯定されたと満足します。候補者がどのような政策をするかは無関係です。これは実はアイドルグループAKBの総選挙と同じ構造なんです。それを後押しするのがSNSの発達で、いいねのボタンを押すことで、目に見えるからです」という説明から始まったのですが、バーチャル文化が今後の格差社会の在り方をも左右する一つの要因であるとして次に進みます。山田さんは平成時代に起きた負のトレンドとして「少子高齢化」「経済停滞」「男女共同参画の停滞」「格差社会の進行」を指摘し、この4つは相互に関連していると言います。特に格差社会の進行では、正規雇用と非正規雇用との間で収入差が生まれ、先の昭和時代に比べて格差が拡大したと説明。そして令和の時代では、格差がより顕著化していると言います。ところが、リアルな世界では豊かになれず希望が見出せなくても、山田さんに言わせると、現代の若者は「不幸に見えない」と言い、その理由を「バーチャルで格差を埋める時代になっているから」と指摘します。ただ、リアルとバーチャル、それぞれの世界で満足することにとどまれば新たな社会的分断を生み、格差がすすむことで少子化に拍車がかかり、結果的に日本は衰退するとも言います。これを回避するには「相当な荒療治が必要です」と話し、「日本的雇用慣行と戦後型家族(性別役割分業型)からの脱却が必要」と示唆しました。