最近になって、英国の王位継承に関する議論が報道されたと思っていたら、日本の皇室典範についても検討課題が浮上した。
英国には、1701年にウィリアム3世が提案し、制定されたAct of Settlementで王位継承権の順位が決められており、女性にも権利が認められているが、男子に優先権がある。現在のエリザベス女王は、前王ジョージ6世の長子で兄弟は居ない。Kingの方がQueenよりも当然数は多いが、ヴィクトリア女王は歴代一の在位期間の長さを持ち、また、16世紀のエリザベス一世の名声は歴史上燦然と輝いているから、女王の存在感は決して小さくない。そういう背景もあるが、王位継承について改正を提案したキャメロン首相の説明は、「男子を優先させるという考えは時代遅れ(outdated)だ」ということであった。そして、英女王を国家元首とする英連邦加盟国の首脳会議に於いても合意が得られたので、それらの国で法改正が行われ、実際には王位継承順位第2位のウィリアム皇子(チャールズ皇太子の長子で今年4月に結婚)の子どもから適用されてといわれている。
男女平等の先進的な北欧諸国ではすでに長子(男女に関係なく)優先の王位継承制が確立されており、今度英国もこれをとるわけである。
他方、日本の皇室典範について、何を検討しようというのであろうか? 最初の問題意識は、女性の皇族が結婚(皇族以外の人と)した場合、現在は皇籍を離れることとなっているが、それでは近い将来皇族が減少してしまうという危機感を宮内庁が明らかにしたことにある。5年前、小泉内閣は現在の天皇の孫の世代に男子が皆無だったことを背景に、「皇室典範に関する有識者会議」を設け、その報告書では、女性皇族にも王位継承権を与えることを前提に、結婚後も皇族の身分にとどまるよう提言された。しかし、女性・女系天皇に対する慎重論が起こり、足踏み状態になっている時期に、秋篠宮家に男子が誕生したため、提言はそのまま見送られ、皇室典範は改正されなかった。
その後も、若い皇族のうち大多数が女性である状態は変わらず、その方たちが成年に達し、結婚が現実的になってきた。そこで、今度は、女性宮家を創設するための皇室典範改正が浮上したという次第である。
もう1つの問題は、78歳を迎えられる天皇の公務の負担が重すぎるので、軽減を計れないかという点である。皇室典範には、定年も譲位も規定がない。私たち昭和一桁生まれは、昭和天皇がいつまでもお元気なのに励まされていたようなところもあり、退位についての議論が起こったという記憶はない。具体的には、運用を工夫して、負担軽減が可能とあれば、典範改正には至らないのであろう。
そこで、典範改正の見通しはどうかという問題だが、現政権は、皇族減少への危機感は持っており、緊急性は高いとしながら、小泉首相でさえ挫折した改正を推進するために必要な体力というものを持っているのか、甚だ疑問であり、改正は幸か不幸か近い将来には期待し難いのではないだろうか?