久しぶりの海外旅行をした。モロッコに5日、スペイン(アンダルシア)に6日、ほどほどの長さで、まだ見ぬ土地への訪問は楽しみと緊張感があり、文字通り山あり谷あり、スリリングな場面も充分だった。モロッコでは、ラバト、ワルザザート、アンダルシアはマラガ、ガラナダとそれぞれ個性豊かな町に滞在したので、見聞記を書けば、楽しい読み物になりそうだが、ここでは適当ではないので、女性の地位に関することに絞って書くことにしたい。
モロッコについては、格好の資料が手に入った。モロッコ政府が国連の女子差別撤廃委員会に2006年9月に提出したリポートである。
モロッコは1993年の6月に、女子差別撤廃条約を批准しており、同条約の規程に従って、1994年以降4年ごとに条約の履行状況について委員会にリポートを提出することになっている。2006年に、第3次と第4次の合併号を提出し、本年2月に委員会はこれを審査した。国連文書の入手は、以前はニューヨークとかジュネーブの会議場へ行って資料係からもらっていたものだが、今やIT時代、自分のコンピューターで全文をプリントできるようになった。
そこで、モロッコ政府がフランス語で提出した報告書を国連が公用語6カ国語にして発表、その英語の分をプリントアウトして読んだというわけである。
現在女子差別撤廃条約を批准している国は世界で185ケ国(未批准は8ヶ国のみ)にのぼっているが、イスラム諸国には、留保をつけて批准している国が目につく。
「あらゆる形態の女子に対する差別を撤廃する条約」を批准するというのは、かなりの決意の要る行為なのだが、留保をつけることによって、問題を回避する手である。モロッコも国籍法、家族法における男女不平等に関して留保をつけて批准をしたが、2006年の法改正によりこれらの留保を撤回することが可能となったと、報告されているのは喜ばしいことである。
しかし、まだ法制上の差別が残っているのが、社会保障法の中の家族給付への父の優位であり、これは家族法上の夫の権威に呼応するものと指摘されている。
広く存在する事実上の不平等については、間単になくせるものではないが、リポートでは非識字率の男女差に特に言及している。
その差は都市部と地方との間の格差も大きいと述べられており、短い滞在中にも首都ラバトとそれ以外の場所での服装などの差も目にとまった。
しかし、何といっても非イスラム教徒にとって気になるのは、一夫多妻の風習である。イスラムの教えでは、4人の妻をもつことは、公平に扱うことを条件として認められている。これは前記条約とは相容れないことから、批准に際しての留保につながるのだが、モロッコでは、家族法を改正して妻2人までとし、いずれ一夫一婦とする方向で留保の撤回をめざしている。4人でなく2人というのは、首をかしげたくなる改正であるが、裁判所の承認を条件としたり、考えたうえの妥協なのであろう。
この国は、立憲君主制とはいえ、国王は行政権と三軍の指揮権を持つ強い地位にあるので、その意志はまさに、Political Willともいえよう。1956年のフランスからの独立以来、三代の国王は何れも国の民主化を目指してきたが、現在のモハメッド6世は女性の進出を推進していると好評であった。直近の内閣改造で一挙7人の女性を閣僚に任命した(34人中)という。スペインで、5月の総選挙後の組閣で閣僚の過半数(17人中9人)を女性としたのと並ぶ快挙といえよう。
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